オーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏の県。
中央高地の南東部で、セヴェンヌ山脈中に位置し、東の境界にはローヌ川が流れています。
土壌や気候は、自然環境や景観が幅広く多様であることが理由で県の北と南で非常に異なります。北部が温暖な気候である一方、南部は地中海性気候です。
北西部はオート・ヴィヴァレと呼ばれ、湿度が高く緑が多く、この地方の標高の高い丘陵と低い山々は中央高地に属します。
南はバ・ヴィヴァレといい、石灰岩質で乾燥し、植生も地中海性です。
アルデシュ川流域は、地下水が非常に多いことで知られていますが、これはカルスト地形の特徴のひとつです。
生産者名 | Jonathan Foissac ジョナサン・フォアサック Aude Barralon オード・バラロン |
Désaignes デセーニュ
ヴァランスから北西方面に約45キロ程離れた場所に位置する農耕段丘の中にひっそりと佇む小さな村です。地中海性気候に属します。
2000年にわたる工芸の歴史があり、中世の村の城壁は時の試練に耐えており、温泉やローマ時代の別荘などが点在し紀元前数世紀の雰囲気を持っています。
人生の転機と方向転換のために、ジョナサンは2017年にDesaignes(デセーニュ)に移り住み、パートナーのオードとワイン生産事業を立ち上げました。
2019年から2022年にかけて、2.5ヘクタールの土地にブドウの樹を植えます。すべてのブドウの樹がフル生産される頃には、年間80ヘクトリットルのワイン(約1万本)を生産することを目指しています。
ブドウ品種の選択は簡単でした。彼の好きな品種、ピノ・ノワールとガメイがテロワールに適していることがわかりました。
白は思い切ってピノ・グリを選択。このテロワールではめったに使われませんが、花崗岩の土壌によって、より品種の個性が引き立つだろうとふみました。
ブドウの樹はすべて標高500~600メートルの丘の斜面に植えられ、ゴブレまたはコルドン・ド・ロワイヤ方式で剪定されます。
畑には、発酵エキス、煎じ薬、浸漬液、エッセンシャルオイルのみを使用。硫黄と銅の散布は行っていません。
手摘みで収穫をし、土着酵母を使って発酵させる。発酵と熟成はcuves grès(ジャー)で可能な限り自然に行います。清澄、濾過は一切行いません。
私たち(SOU)は、取引を始める前に二度彼らを訪れています。一度目は、22年ヴィンテージが仕上がる前の2023年4月でした。
まだカーヴも完成しておらず、小屋のような場所でステンレスタンクを用いて醸造をしていました。
21年にほんの数量の葡萄を用いて醸造をしましたが、彼らがいう初ヴィンテージとは2022年。600本のワインを完成させ地元の人達に販売をしました。
2023年ヴィンテージは2500本程のワインが完成する予定でしたが、ミルデューにより畑が全滅してしまい、信頼のおける生産者からの買い葡萄でワインを仕込むことになりました。
二度目の訪問は、2023年10月でした。その頃には立派なカーヴが完成しており、念願のジャーで、購入した葡萄を醸していました。
日本初リリースとなる2023年ヴィンテージは、ネゴスキュヴェとなりますが、ジョナサンの繊細な感性が光る素晴らしい味わいです。是非お楽しみになさってください。
妻Audeさんの生まれ育ったDesaignesという村で21年からワインを造り始めたジョナサン。もうここで暮らし始めて5年になる。
本人はヴィニュロンという認識はなく自分たちを農家だという。
もともと山羊や馬の農場だったその場所で、馬を売ったり、食用の羊を飼い、草を食べさせたりして、動物と環境を共有している。
現在18ha所有する土地のうち2.5haに葡萄を植えている。少しずつ植樹をしていて近い将来、総生産量は1万本程度になる予定。
2022年初ヴィンテージに仕上がった600本は地元の人たちへ販売する。
土地は花崗岩が風化した場所。粘土や石灰も混ざる。
630mある標高も大きく影響しているが、土が酸性でミネラルが豊富なことから南らしからぬ冷涼感をワインにもたらしている。
ヴァランスからその村まで距離にすると35キロから40キロだが車がギリギリ通れるような険しい山道を激しいアップダウンを繰り返しながら進まなくてはならない。
思った以上に時間を要した。
永遠にたどり着けないと思えるような不安を途中何度も乗り越え辿り着いた場所はまさに秘境。なんとドメーヌは国立公園内に位置していた。
醸造学校に通っていたときにエルヴェスオーで研修をする。
とても勉強になったが、14haを管理する大変さも同時に経験し、自分はもっと小さい規模で葡萄を栽培していきたいと思った。
また、ボルドー液を撒かずに畑を管理している。そのため土地をビオディナミゼするために施さなきゃならない作業がとても多い。
畑は急な斜面に点在するため、作業は過酷を極め、広域ではとても管理しきれない。
今は両親や奥さんに手伝ってもらいながら、ほぼ一人で管理しているが、馬の調教師であるAudeに来年からは本格的に畑仕事を手伝ってもらう予定だという。
プレス機は1Km離れた生産者に借りている。
醸造所は今年中に完成する予定。「イマジネーションを広げて見てください」と、未だ更地のその場所を案内してくれた彼は、恥ずかしそうにはにかんでいたが
キラキラと輝かせている目の奥は希望に満ち溢れていた。
植えているのは、ピノ・ノワールとピノ・グリ、ガメイ。
小さなキャタピラーと手作業で畑作業をこなす。
それぞれ点在しているが、一番高い場所に植えているピノ・ノワールは東向きの区画。2019年に植樹しコルドン仕立て。
あまり耕すと土壌が温まるから冷涼感を保つために4月末まで放っておくと言っていた。
南向きのピノ・グリの区画はピノ・ノワールよりも下に位置する。
房が大きく育ち収穫量も多くなるから調整のしやすいギヨ仕立てにした。
生え残ったいばらに何度も足を引っかけて転びそうになりながら区画と区画の間を移動した。
これでもだいぶ整備したという。いばらが背丈ほどに生え茂っていた状態を改良し、野草や野花などは残し自然に整えた。
昔は、葡萄栽培をしていた人たちが、ちらほら居た土地だったが、過酷な労働と高齢に伴い、その数は減っていき、農地放棄の末いつの間にか荒れ地になった。
そこでまた昔のような土地を蘇らせようと10年前に村のプロジェクトで復活を試みた。
その時に召集された一人が、長い間ダールエリボで働いていた馬引きの名人レイモンさんだった。
それでもまだ、この土地で葡萄を栽培しているのはジョナサンを含めて片手にも及ばない。
今後この場所でワイン造りを始める仲間が増えることを望んでいるという彼は、実際に自分がワインを造り始めて、この土地の可能性を大いに実感している。
21年は雨が多かったけれどボルドー液をまかずしても全く問題なかった。この土地の持つ力を周りに伝えていきたいと言う。
ガメイは一番下に位置する区画と一番上に位置する区画に植えた。
一番下の区画はゴブレにした。上の区画は植えたばかりだが朝日を燦燦と浴びる場所だから、きっと力強いキュヴェになる。
ただアルデッシュでは稀な標高の高さ630mは想像以上に風が吹き抜け寒暖差が激しい。葡萄がどんなに熟しても野暮ったくなることがない。