Producer introduction
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フランスとの出会いは2012年3月に開催されたBeaujolaiseというサロンだった。
初お披露目だったのか?参加していた彼女は一躍時の人となっていた。
ロックスターのような身なりをした女の子がとんでもないワインを造ったと。
20代前半だった彼女はボジョレーの父といわれるジャン・クロード・ラパリュの弟子として華々しいデビューを果たしていた。
あれから10年、3人の子供と生まれ故郷であるサヴォワに移住することを決意する。
ボジョレーでは、キュートな容姿とは裏腹に急斜面の区画を含む6ヘクタールもの畑を一人でエネルギッシュにこなしていた。
その頃の彼女を一言で表すと、まさに「エネルギー」!!!
持前のセンスをもって力強さと繊細さが共存する魅力あふれるワインを次々とリリースした。
サヴォワに移り住んだ理由は色々ある。
アルプス山脈に囲まれた素晴らしい環境で子育てをすることもひとつだが、人生にはリセットしたいと思うタイミングはあるもの。
彼女の男前な性格と潔いキャラクターに奥深い優しさと肝っ玉かあちゃんのような明るさが加わったその姿をみても悟るものがある。
カーヴを訪問した時、近所の住民がどこからともなくワインを買いにやってきた。皆、彼女のファンである。地元の名手さながらのおじ様たちを受け入れ、冗談を交えテンポよくさばいていく。そんな空気感が心地良い。皆を笑顔にしていた。
ボーヌの醸造学校に通いながらラパリュで研修をしていたとき、急に一つのキュヴェを任せられた。その時に欠点も良いところも全ては自分次第ということを学んだ。
だから、買い葡萄でも収穫のタイミングは全部自分で決めている。
ボジョレーでは一斉に始めていたが、ここサヴォワでは収穫のタイミングは区画ごとに待って行う。その期間の幅は、およそ2か月にも及ぶ。
瓶詰めしたばかりの2022年ヴィンテージを試飲させてもらっているとき、今後はジャー(アンフォラ)を少しずつ増やしていきたいと彼女は言った。
まさに!フランスが醸す液体は、ジャーにとても合っている。
品種の個性と向き合って、出来るだけピュアに表現したい彼女には、当然の選択のように思えた。
試飲が終わると、地元の人達で賑わうビストロへ食事に行こうということになった。
彼女のファンたちも一緒だ。
そこで、包み隠さず、正直に語ってくれたワインへの想いや自身の歴史。
潔く大胆に見えるが、細かい気を遣える繊細で優しい人である。
細い身体で子育てをしながらでは想像以上に大変だろうが、堅実に一生懸命、この地で改めて生産者としての道を進む決意をした。
話を聞いていたら、全くそんな苦労は感じさせないが、彼女を応援したい気持ちでいっぱいになった。
帰り、同じ想いで彼女を支えているであろう地元の名手たちが、もう一杯ご馳走させてくれとなかなか帰してくれなかった。
デザートまでご馳走になり、おなかがはちきれそうになった私たちを、彼女は申し訳なさそうにウィンクしながら解放してくれた。
私たちを見送り店に戻るその華奢な後ろ姿をみて、逞しさと、新たな挑戦への覚悟を感じた。(2023年4月)