ドイツとスイスに隣接するフランス東部の歴史的な地域で、ヴォージュ山脈とライン川の間に位置します。ヴォージュ山脈の東側斜面を背にするブドウ畑は、標高平均200mから450mの丘が連なる山脈麓に広がっています。その地形(ボージュ山脈の自然な壁)によって大西洋気圧変動から守られ、多様性を誇る土壌やミクロクリマ(微気候)がブドウの生育に適した環境を整えています。フランスで最も降水量の低い産地(500から650mm)の1つであり、日射量が多く、乾燥した半大陸性気候に分類されます。他の地方と異なる点は、秋には温暖な日中と涼しい夜に恵まれること。これが、ブドウのゆっくりと時間をかけた成熟を促進すると言われ、複雑なアロマ、熟した酸味がワインに爽やかさを与えています。産地名ではなく使用するブドウ品種がワイン名となるのも、この産地の特徴です。郷土料理は、シュークルート、タルトフランベ、ベッコフ、クグロフなど。フォアグラもアルザス原産です。ボージュ山脈にあるマンステールの谷が原産の、ウォッシュタイプのチーズ、マンステールもワインとともに親しまれています。
生産者名 | Jonathan Foissac ジョナサン・フォアサック Aude Barralon オード・バラロン | Désaignes |
ヴァランスから北西方面に約45キロ程離れた場所に位置する農耕段丘の中にひっそりと佇む小さな村です。地中海性気候に属します。
2000年にわたる工芸の歴史があり、中世の村の城壁は時の試練に耐えており、温泉やローマ時代の別荘などが点在し紀元前数世紀の雰囲気を持っています。
人生の転機と方向転換のために、ジョナサンは2017年にDesaignes(デセーニュ)に移り住み、パートナーのオードとワイン生産事業を立ち上げました。
2019年から2022年にかけて、2.5ヘクタールの土地にブドウの樹を植えます。すべてのブドウの樹がフル生産される頃には、年間80ヘクトリットルのワイン(約1万本)を生産することを目指しています。
ブドウ品種の選択は簡単でした。彼の好きな品種、ピノ・ノワールとガメイがテロワールに適していることがわかりました。
白は思い切ってピノ・グリを選択。このテロワールではめったに使われませんが、花崗岩の土壌によって、より品種の個性が引き立つだろうとふみました。
ブドウの樹はすべて標高500~600メートルの丘の斜面に植えられ、ゴブレまたはコルドン・ド・ロワイヤ方式で剪定されます。
畑には、発酵エキス、煎じ薬、浸漬液、エッセンシャルオイルのみを使用。硫黄と銅の散布は行っていません。
手摘みで収穫をし、土着酵母を使って発酵させる。発酵と熟成はcuves grès(ジャー)で可能な限り自然に行います。清澄、濾過は一切行いません。
私たち(SOU)は、取引を始める前に二度彼らを訪れています。一度目は、22年ヴィンテージが仕上がる前の2023年4月でした。
まだカーヴも完成しておらず、小屋のような場所でステンレスタンクを用いて醸造をしていました。
21年にほんの数量の葡萄を用いて醸造をしましたが、彼らがいう初ヴィンテージとは2022年。600本のワインを完成させ地元の人達に販売をしました。
2023年ヴィンテージは2500本程のワインが完成する予定でしたが、ミルデューにより畑が全滅してしまい、信頼のおける生産者からの買い葡萄でワインを仕込むことになりました。
二度目の訪問は、2023年10月でした。その頃には立派なカーヴが完成しており、念願のジャーで、購入した葡萄を醸していました。
日本初リリースとなる2023年ヴィンテージは、ネゴスキュヴェとなりますが、ジョナサンの繊細な感性が光る素晴らしい味わいです。是非お楽しみになさってください。
生産者名 | Victor NITSCH ヴィクトール・ニッチ Marceau DUMAS マルソー・デュマ | Genillé |
トゥーレーヌ地方、サントル・ヴァル・ド・ロワール地域圏のコミューン。アンドル=エ=ロワール県の南東部に位置します。
パリの自然派カーヴで4年間カーヴィスト兼ソムリエとして働いていたヴィクトールは、のちに生産者の道を志し、アルザスのドメーヌ・オステルタグでブドウ栽培と醸造学のBTSを取得します。また、黒ブドウ品種からワインを造る方法を学びたいと思ったヴィクトールは、カオールのドメーヌ・ラ・カルメットで刺激的なワイン造りのシーズンを過ごし、多くのことを学びます。
一方で、アンジェでワイン専門の農業エンジニアとして働いていたマルソー。マコンのドメーヌ・ラ・スフランディエールのブレット兄弟のもとで2年間働いた後、アルザスで経験を積むことを決意します。その後、ドメーヌ・オステルタグ、ドメーヌ・アキレで働き、トゥーレーヌに戻ったマルソーは、ノエラ・モランタンのもとで2シーズンのワイン造りを経験します。
二人は、共に修行先となったドメーヌ・オステルタグで出会いを果たし、それぞれの経験を持ちよりトゥーレーヌで合流。自分たちのプロジェクトを立ち上げます。
彼らが言う「プロジェクト」とは、歴史的なブドウ畑、ル・ロショワにブドウの樹を植え替えること。ロワールのこの地域は、今日ではほとんど知られていませんが、かつては偉大なワインを生産していました。素晴らしいテロワールがあると確信していた彼らは、ここに、ブドウの樹を植え替えるための土地を購入します。
そして、このプロジェクトが実現するのを待つ間、彼らは”negoce artisanal ”を開始します。
有機栽培農家または有機栽培に転換して3年目以降の農家からブドウを購入し、自分たちのチームで手摘み収穫をし、ロッシュ近郊のジェニェにあるワイナリーで圧搾をします。圧搾には特に注意を払う彼ら。これがワインの品質を左右する鍵のひとつだと考えます。そのために、1867年製の古い手動式圧搾機を使用し、ブドウを約13時間もかけて非常に優しく圧搾をする。このプレス工程により、ワインの複雑性に大きな役割を果たす数多くの抗酸化物質とポリフェノールを優しく抽出することができるといいます。
醸造に関しては、100%土着酵母を使用しています。瓶詰め時に少量の亜硫酸(10mg/l未満)を使用する以外、他の添加物は一切使用していません。例外的に、ワインが自分たちの望まない方向に進んでいると感じた場合は、醸造中に微量の亜硫酸を使用することがありますが、目標は、できるだけ自然で、欠点がなく、テロワールを反映したピュアなワインを造ることです。
植樹を開始した75アールの区画で、2024年ヴィンテージから自社ブドウの最初のワインを生産する予定。
まずは、彼ら初ヴィンテージとなる2023年のネゴスキュヴェを、丁寧に繊細に、そして綺麗に醸す彼らの表現を、是非お楽しみになさってください!
生産者名 | Arthur Peltier アルチュール・ペルティエ Achille Ravineau アシル・ラヴィノー | Valaire |
サントル・ヴァル・ド・ロワール地域圏のロワール=エ=シェール県の中央部。ブロアから南南西方面に14キロ程離れた場所に位置する村です。ロワール渓谷と丘陵地帯の小さな農業地帯の一部で、気候は、海洋性の影響を受け、日照時間が長く、夏季に雨が少ないという特徴を持つ、ロワール渓谷気候に属します。
10年来の友人で共にブルゴーニュで栽培と醸造学の学士号を取得したアルチュール・ペルティエとアシル・ラヴィノー。
彼らはお互いのファミリーネームをドメーヌ名に、2023年に生産者としてのスタートを切りました。
学士号取得後は、アルチュールはクロ・デュ・テュ・ブッフで、アシルはエルヴェ・ヴィルマードで、それぞれ研修を積み、
2021年から少しずつ畑を手に入れ、ブロアから14キロ程離れた村ヴァレールにドメーヌを構えました。現在は5haを所有。
2021年と2022年は、彼らが手掛けた葡萄をクロ・デュ・テュ・ブッフ、エルヴェ・ヴィルマード、レ・カプリアードに販売をしました。
本格的にワイン造りに踏み切る前にしたこの2年間の葡萄栽培の経験によって、より深くテロワールを知ることが出来たという二人。
真面目を絵にかいたような彼らが醸す期待いっぱいの初ヴィンテージがいよいよリリースです!
生産者名 | Corentin ALLOT コランタン・アロ Sebastien LINCY セバスチャン・ランシー | Châteauvieux |
シャトーヴューは、フランス中部のロワール=エ=シェール県の南端、トゥーレーヌ南部のボカジェ平原の小さな農業地帯の一部です。
ブロワから南に約40㎞の場所に位置し、シェール渓谷と隣接した村で、海洋性気候に属します。
「プース・ピエ」(=フジツボ)は小さな海洋性甲殻類である。私たちはブルトン人の出身を反映させるためにドメーヌ名にこの名前を選んだ。ブルターニュでは、多くの時間を海辺で過ごし、散歩や釣りに時間を費やした。フジツボは南ブルターニュの海岸を象徴する種であり、私たちは特にグロワ島でフジツボを採取して食べるのが大好きだった。そう語るのは、小学生の頃からの同級生でブルターニュ出身の仲良し二人組、コランタンとセバスチャン。
彼らがワインの世界を知ったのは、2010年にエルヴェ・ヴィルマードの収穫を共に手伝った時でした。それをきっかけにワインへの情熱が高まり、アンボワーズの農業大学で葡萄栽培のディプロムを取得します。
その後、ヴーヴレのヴァンサン・カレムやジュリアン・ピノーで職業体験をし、コランタンはノエラ・モランタンで3年間、セバスチャンは引き続きジュリアン・ピノーで2年間働きます。その他にも、ドメーヌ・レオニヌ、ジェフ・クトゥル、ティエリー・ピュズラ、ローラン・サイヤールなどの自然派ドメーヌのもとで、さまざまな栽培方法や醸造を学び、多くの経験を積んだ二人は、いよいよ海を離れ、Châteauvieux(シャトーヴュー)の、下層に石灰岩そして粘土と石が多く混ざる素晴らしい土壌をを手に入れることを決意します。
2023年にドメーヌを立ち上げ同年ファーストヴィンテージをリリース。ワインにフレッシュさをもたらすこのテロワールがとても気に入っているという二人。現在1.5ヘクタールのソーヴィニヨンとシュナンを栽培しています。畑の一部はワイナリーから目と鼻の先、粘土質の多いテロワールにあり、もう一部は、サン・ジュリアン・ド・シェドン村の一番高いところに位置する、冷涼で風の強い場所にあります。
ワイナリー周辺の美しいテロワールを徐々に回復させることにも穏やかに情熱を燃やしている彼らは、土壌に化学薬品を一切使用せず有機栽培に取り組んでいます。
一緒にワインを造り、それぞれの経験を最大限に生かすために常に意見を交換し合う彼らは、ワインをより複雑なものにするために、さまざまな醸造方法やいろいろな容器を試し、酵母も添加せず清澄も濾過もせず、自然にワインを醸造したいと考えます。すべてほとんど、あるいは全く手を加えずに。
初ヴィンテージとなる2023年は、自ら栽培した葡萄と彼らと価値観を共有する信頼のおける生産者からの買い葡萄で5つのキュヴェをリリースします。ピュアで真っ直ぐ、心優しく繊細な彼らを反映したようなワインたちは、素晴らしい個性とセンスに溢れています。
生産者名 | Laurent ROGIER ローラン・ロジエール | Ventoux |
ヴァントゥーは南ローヌの南東部、プロヴァンスとの境に位置する広大なワイン産地です。アヴィニョンの北東約40km、ヴォークリューズ県に位置します。
ぶどう畑は「プロヴァンスの巨人」とも形容される標高1912mのユネスコ生物圏保護区、ヴァントゥー山に広がるエリア。
土壌は粘土状の石灰岩。ぶどう畑の標高は400m程度。
気候区分的には地中海性気候に属しますが、風を意味するフランス語ventを含む通り、山肌にはミストラルが強く吹きぬけ、この地独特のテロワール(生育環境)の形成に大きな役割を果たしています。
国際的な自転車レース、ツール・ド・フランスのコースが、山の北側を縫うように走ることでも知られています。
「羊飼いは群れを率いるよりもその群れに従うものだ」ラングドック出身の作家マックス・ルーケットの言葉です。
ワイン生産者としての自分の仕事への取り組み方を見事に表している。とローラン。
「私の仕事は、それぞれの区画の葡萄に耳を傾け、可能な限りのサポートを与え、調和を促し、最高の果実を実らせることである。」
南ローヌ、ヴァントゥーにドメーヌを構える当主ローラン・ロジエールは元々エンデューロのプロライダーでした。
実家が所有する26haもの土地で家族が葡萄以外にも果物やオリーヴ、動物など、いわゆるポリカルチャーを行っています。
自身もプロライダーを引退し2005年に9haを譲り受け農業に加わります。
2005年から2007年までは育てた葡萄を農協に売っていました。
ワイン造りのために本格的に葡萄栽培を始めたのは2008年からで、開始当時から畑はビオロジックで行っています。
2010年にカーヴを建設し2015年からワイン造り始めて2018年にファーストヴィンテージをリリース。
完全に亜硫酸無添加で造れた2022年からSOUが輸入を開始します。
※エンデューロ:林道などの未舗装の自然道を走るレースのこと。 オフロードバイクを使った人命救助が発展してできたスポーツ。
※ポリカルチャー:自然の生態系の多様性を模倣して、複数の種が同時に同じ場所で栽培される農業の一形態。
生産者名 | Olivier Cohen オリヴィエ・コエン | Argelliers |
オクシタニー地方のエロー県北東部にある村。2つの自然遺産(エローの峡谷 と モンペリエの峡谷)を有している自然豊かな地域で、エロー川、コルビエール川、アルネード川、ガロンヌ川、その他の小河川が流れています。地中海性気候に分類され、冬は温暖で夏は暑く、日照時間が長く、頻繁に激しい風が吹きます。風の影響は、この土地で造られるワインに南らしからぬふくよかな酸をもたらします。
生産者名 | Arthur Jean Ginglinger アルチュール・ジャン・ガングランジェ | Pfaffenheim |
コルマールから南南西方向に車を20分程走らせた場所に位置するワイン生産が盛んな村です。バロン・デ・ヴォージュ地域自然公園内にあるコミューン のひとつでもあります。村の主な富の源泉は常にブドウの木であったため、1階にはポーチとセラー、2階には居住スペースがある典型的なワイン生産者の家が数多くあります。
ガングランジェ家のドメーヌは、歴史的な街並みが印象的な村、ファッフェンハイムにあります。
畑はそこから西側に車を5分程走らせた丘陵地に点在しています。
アルチュールは子供の頃から両親とともにいつもブドウ畑にいました。
16歳の時、家族のドメーヌで3年間見習いとして働き、大学時代には、JPフリック、ブルーノ・シュレール、パトリック・メイエのもとで実務経験を積みました。
2018年に父のパートナーとしてドメーヌに加わり、2020年から2022年まではオルシュヴィール地区にブドウ畑を借りていました。2023年春からエギスハイムとルーファック地区に90アールの畑をを所有し、62アールの畑を借りてワイン造りをしています。
生産者として恵まれた環境でスタートを切ったアルチュールですが、真面目で実直な性格は、畑と向き合っていくことを苦としない職人気質。両親の愛情を一身に受け、父親や周りの生産者へのリスペクトを抱き、自身の性格を反映させたようなピュアで美しいワインを造りだします。
生産者名 | France Gonzalvez フランス・ゴンザルヴェス | Aprement |
ミネラル感のあるワインを産出する北東部に位置し、最大のブドウ栽培地でもあります。散らばった岩の破片は1248年に起こったグラニエ山の大規模な土砂崩れの被害を物語るもの。
グラニエ山が太古の昔大海原だったこともあり、この崩落によって化石交じりの石灰岩が水はけの良い粘土層と同化し、葡萄栽培にとって適したテロワールを形成しているといわれています。
シャンベリーの南東に位置するアプルモンにドメーヌはあります。
圧倒的な存在感で村を見下ろすグルニエ山は、1248年に土砂崩れを起こしました。
その時、岩の破片が散らばった範囲はなんと21㎞にも及んだといいます。
未だ付近を散歩するとそこら中にそれらしき岩や石ころがころがっているこの場所で、フランスは手に入れた2haもの畑に植樹をします。
フランス・ゴンザルヴェスのワイン生産者としての始まりはボジョレーでした。
2008年に半ヘクタールの土地を手に入れた彼女は、女性が一人でワイン造りをしていくには厳しい土地ボジョレーでスタートを切ります。
その5年後には南向きの花崗岩土壌、コート・ド・ブルイィの区画を含む4ヘクタールを、さらには2014年に6ヘクタールに畑を増やし、生産者として順調に歩んできました。
葡萄のエネルギーをストレートに感じる力強さ、また女性らしい繊細さを兼ね備えた彼女のスタイルは、飲み手に強い印象を与えます。
2022年、ボジョレーを離れ、生まれ故郷であるサヴォワに移り住み、信頼のできるビオ栽培の生産者から葡萄を購入することを決めると、収穫に携わり、今までの経験を活かして再びワインを造り始めました。
今回輸入するワインは全て買い葡萄で仕込んだものですが、ボジョレーの味わいを知る方は、どこか懐かしい雰囲気を感じることでしょう。
力強く大胆な彼女らしさと、サヴォワという土地の個性、今までの経験を活かし綺麗に仕上げた繊細さ、それぞれの品種の特性を存分に味わえます。また、彼女だからこそ表現できる、彼女にしか出来ない表現を是非感じて欲しいと思います。
ガメイを知り尽くした彼女がガメイ・ド・サヴォワを醸すと?どんな味わいになるのか??などなど。。乞うご期待です!!!
妻Audeさんの生まれ育ったDesaignesという村で21年からワインを造り始めたジョナサン。もうここで暮らし始めて5年になる。
本人はヴィニュロンという認識はなく自分たちを農家だという。
もともと山羊や馬の農場だったその場所で、馬を売ったり、食用の羊を飼い、草を食べさせたりして、動物と環境を共有している。
現在18ha所有する土地のうち2.5haに葡萄を植えている。少しずつ植樹をしていて近い将来、総生産量は1万本程度になる予定。
2022年初ヴィンテージに仕上がった600本は地元の人たちへ販売する。
土地は花崗岩が風化した場所。粘土や石灰も混ざる。
630mある標高も大きく影響しているが、土が酸性でミネラルが豊富なことから南らしからぬ冷涼感をワインにもたらしている。
ヴァランスからその村まで距離にすると35キロから40キロだが車がギリギリ通れるような険しい山道を激しいアップダウンを繰り返しながら進まなくてはならない。
思った以上に時間を要した。
永遠にたどり着けないと思えるような不安を途中何度も乗り越え辿り着いた場所はまさに秘境。なんとドメーヌは国立公園内に位置していた。
醸造学校に通っていたときにエルヴェスオーで研修をする。
とても勉強になったが、14haを管理する大変さも同時に経験し、自分はもっと小さい規模で葡萄を栽培していきたいと思った。
また、ボルドー液を撒かずに畑を管理している。そのため土地をビオディナミゼするために施さなきゃならない作業がとても多い。
畑は急な斜面に点在するため、作業は過酷を極め、広域ではとても管理しきれない。
今は両親や奥さんに手伝ってもらいながら、ほぼ一人で管理しているが、馬の調教師であるAudeに来年からは本格的に畑仕事を手伝ってもらう予定だという。
プレス機は1Km離れた生産者に借りている。
醸造所は今年中に完成する予定。「イマジネーションを広げて見てください」と、未だ更地のその場所を案内してくれた彼は、恥ずかしそうにはにかんでいたが
キラキラと輝かせている目の奥は希望に満ち溢れていた。
植えているのは、ピノ・ノワールとピノ・グリ、ガメイ。
小さなキャタピラーと手作業で畑作業をこなす。
それぞれ点在しているが、一番高い場所に植えているピノ・ノワールは東向きの区画。2019年に植樹しコルドン仕立て。
あまり耕すと土壌が温まるから冷涼感を保つために4月末まで放っておくと言っていた。
南向きのピノ・グリの区画はピノ・ノワールよりも下に位置する。
房が大きく育ち収穫量も多くなるから調整のしやすいギヨ仕立てにした。
生え残ったいばらに何度も足を引っかけて転びそうになりながら区画と区画の間を移動した。
これでもだいぶ整備したという。いばらが背丈ほどに生え茂っていた状態を改良し、野草や野花などは残し自然に整えた。
昔は、葡萄栽培をしていた人たちが、ちらほら居た土地だったが、過酷な労働と高齢に伴い、その数は減っていき、農地放棄の末いつの間にか荒れ地になった。
そこでまた昔のような土地を蘇らせようと10年前に村のプロジェクトで復活を試みた。
その時に召集された一人が、長い間ダールエリボで働いていた馬引きの名人レイモンさんだった。
それでもまだ、この土地で葡萄を栽培しているのはジョナサンを含めて片手にも及ばない。
今後この場所でワイン造りを始める仲間が増えることを望んでいるという彼は、実際に自分がワインを造り始めて、この土地の可能性を大いに実感している。
21年は雨が多かったけれどボルドー液をまかずしても全く問題なかった。この土地の持つ力を周りに伝えていきたいと言う。
ガメイは一番下に位置する区画と一番上に位置する区画に植えた。
一番下の区画はゴブレにした。上の区画は植えたばかりだが朝日を燦燦と浴びる場所だから、きっと力強いキュヴェになる。
ただアルデッシュでは稀な標高の高さ630mは想像以上に風が吹き抜け寒暖差が激しい。葡萄がどんなに熟しても野暮ったくなることがない。
ワイン生産者としては大先輩であるフレデリックと「Amis Comme Cochons」(遊び仲間)だよと言えるほど対等な友人でいられるのは、彼からのバイク仲間としての尊敬があるからだろう。
栽培においてもフレデリックから買い葡萄のオファーを受けるほど厚い信頼を得ている。
最近は自身のドメーヌに葡萄を優先するためフレデリックには近隣の信頼できる別の栽培者を紹介している。カーヴを建築したのはフレデリックのカーヴを建てた建築家と同じ建築家だ。
2010年に建設をしてから少しずつ必要なマテリアルを揃え、2022年には増設をした。
良いワインは良いブドウと畑で造られるという原則に基づき、収穫を尊重し、ブドウがその力を十分に発揮できるような機能的なセラーを設計した。
断熱性に優れ、土着酵母のみを使用する発酵に、最適な温度管理をかなえる冷蔵装置を備える。
温度管理を徹底するために醸造にはステンレスタンクを使用している。
非の打ちどころのない衛生管理のなか、ワインは一切の添加物を加えることなく醸造・熟成される。
祖父が土地を手に入れたのは1968年。
その頃に植えられたカリニャン、サンソー、グルナッシュ、シラー、グルナッシュ・ブラン、ユニ・ブランの畑にはテロワールが持つポテンシャルを大いに感じたが、それから37年後、畑を引き継いだローランは、樹齢55年の古木を残し、ストレスを与えないよう、ブドウの成長を止めずに自然に生育させるため、大規模な仕立て直しを行った。
彼の哲学は、"トリック "を一切使わず、亜硫酸もほとんど使用しない、テロワール主導の本物のワインを造ること。
最近ではビオディナミ農法に移行しつつある有機農法で、耕作、処理、すべての手作業(剪定、除芽、葉摘み、棚仕立て、収穫)は月の暦に従って行っている。
厳しい剪定によって、ブドウの木とテロワールとの完璧なバランスを保つことが重要だと考える。手摘みで収穫をし、良いものだけを残すために細心の注意を払って選別をする。
フェノールが熟した状態で収穫することに拘っているため、2回に分けて収穫する区画もある。
2008年の初ヴィンテージ以来、ブドウの木とテロワールに耳を傾ける”職人的生産者であること”を大切にしてきた。
そんな彼の野望はただ1つ、「ワインを手に取ったすべての人に最大限の喜びと感動を与える」こと。(2023年10月)
アルチュールは英雄アーサー王と同じ綴り。
エチケットにはアーサー王にかけて葡萄の房の上で剣を持ったアルチュールが風刺画として登場している。心根の優しいアルチュールには剣ではなくアカシアの方が「らしいわね」と母親のエレーヌは茶化していた。(※アーサー王とは「アーサー王物語」で知られ古くから伝説の英雄として語り継がれている人物。)
ドメーヌを訪れたとき、迎え入れてくれたのは父親のジャン・フランソワだった。
アルチュールの父親でブリュノ・シュレールの従兄弟。彼自身が偉大な生産者である。
息子アルチュールが譲り受けた畑を出来る限り隈なく丁寧に案内してくれた。
息子が手に入れた畑がどれだけ貴重なものか彼が一番理解している。
ドメーヌに戻ると、敷地内で楽しそうに話し込んでいた若者たちが居た。
その中の一人がアルチュールだった。
まだあどけない雰囲気をまとったその青年は恥ずかしそうに挨拶に応えてくれた。
そのあと、料理上手と評判のエレーヌの手料理を皆で頂いた。
あまりにも温かくて美味しいエレーヌの料理は感動的だった。
家庭的な雰囲気のなか席が隣だったアルチュールにいくつか質問をさせてもった。
途中、両親から、アレを取ってこいとか、アレ持ってきてとか、頼まれる度、話を中断し
文句も言わずに直ぐに席を立って言いつけに従うアルチュール。
なんて素直で優しい子だと感心した。質問にも、ひとつひとつ真剣に丁寧に答えてくれる。
とにかく純粋で真っすぐ。それがアルチュールという人。だと思った。
エレーヌが茶化した`アカシア`というのには理由があった。
アルチュールの趣味が、近所の森を散策しアカシアの木を集めることだったからだ。
木のアーティスト。と両親は楽しそうにそう言った。
集めたアカシアの木をつかって家族のためにベンチや家具を作る。
アルチュールが6歳のとき、交通事故に遭った話を母親のエレーヌがしてくれた。
いま元気に生きていることが不思議に思えるほど大きな事故だったという。
それが原因で左足の長さが6cmも違ってしまった。
エレーヌの話を聞いている間、当時の両親の気持ちが痛いほど伝わってきて、胸が苦しくなった。その後、大手術が成功した結果、今うまく歩けている。元気に畑仕事が出来ていることが奇跡のようだ。
子どもは大きくなっても、小さい頃の、一番可愛い頃の思い出を親はずっと忘れない。
あまりにも可愛いかったから、よく思い出す。だからいつまでも忘れない。
その頃に、あまりにも辛い思いをさせてしまったと、言わないけど両親の気持ちが伝わってきた。大切な息子は、ずっと大切だ。その愛情を素直に受けたアルチュールは、本当に真っすぐに、いま自分の道を着実に進んでいる。
アチュールがワイン造りに興味をもったのは中学生の時だった。
その頃から家の向かいにドメーヌを構えるピエール・フリックや、パトリック・メイエ、シュレールの畑を手伝っていた。
父親のジャン・フランソワも物心ついた時から父の仕事を手伝っていたという、実家は栽培農家だった。
自分が自然に畑の仕事を手伝った経緯と変わらず息子のアルチュールも畑仕事を苦だと思わずに取り組んでいる。
そのことにジャン・フランソワは嬉しい気持ちで見守っているようだ。
自分よりも良い畑を手に入れた息子に対して悔しそうな素振りをするが、内心嬉しいというのが顔に出てしまっている。
アルチュールが取り組む区画は以下の通りだ。
①Jean Baptiste Adamから譲り受けた0.65haのオーセロワ、ピノ・ブラン(樹齢 50-60歳)が植わるKiostermattという区画。
湿度が高く乾燥しない土地だから、ペティヤンやクレマンに適しているよう。2004年からビオディナミ。 アルチュールは2023年から所有。 隣りはブリュノシュレールの畑(ⅢKLトワカーエル) 。譲り受けたときシュレールと半分ずつ分けた。
②0.2haのピノ・グリ(樹齢25歳 )が植わる景色の素晴らしい区画。アルザスの冷涼な地域にして標高は400mある。2,3年後までにテラスをつくる予定。
③Pfersigberg/HoernleというGCの区画。 シャンデゾアゾー(シュレールピノ)の隣り。2023年から所有。真下にシュレールのアッシュリースリング。ゲヴェルツにしては暑いから辛口に造るのが難しい。今後グレッパージュ(根を残したまま)ピノ・ノワールなどに変える予定。ここだけ石灰質土壌で皆が欲しがっていた区画。
④ボーレンベルグ(地区名)。0.25haプルミエクリュ。アルザスの中で一番雨が少なく乾燥している。生態系保護区域。プレートがぶつかって溝になった部分で表土が深い土地。
これからがとっても楽しみなアルチュール。期待を込めて精一杯応援していきたい。(2023年4月)
フランスとの出会いは2012年3月に開催されたBeaujolaiseというサロンだった。
初お披露目だったのか?参加していた彼女は一躍時の人となっていた。
ロックスターのような身なりをした女の子がとんでもないワインを造ったと。
20代前半だった彼女はボジョレーの父といわれるジャン・クロード・ラパリュの弟子として華々しいデビューを果たしていた。
あれから10年、3人の子供と生まれ故郷であるサヴォワに移住することを決意する。
ボジョレーでは、キュートな容姿とは裏腹に急斜面の区画を含む6ヘクタールもの畑を一人でエネルギッシュにこなしていた。
その頃の彼女を一言で表すと、まさに「エネルギー」!!!
持前のセンスをもって力強さと繊細さが共存する魅力あふれるワインを次々とリリースした。
サヴォワに移り住んだ理由は色々ある。
アルプス山脈に囲まれた素晴らしい環境で子育てをすることもひとつだが、人生にはリセットしたいと思うタイミングはあるもの。
彼女の男前な性格と潔いキャラクターに奥深い優しさと肝っ玉かあちゃんのような明るさが加わったその姿をみても悟るものがある。
カーヴを訪問した時、近所の住民がどこからともなくワインを買いにやってきた。皆、彼女のファンである。地元の名手さながらのおじ様たちを受け入れ、冗談を交えテンポよくさばいていく。そんな空気感が心地良い。皆を笑顔にしていた。
ボーヌの醸造学校に通いながらラパリュで研修をしていたとき、急に一つのキュヴェを任せられた。その時に欠点も良いところも全ては自分次第ということを学んだ。
だから、買い葡萄でも収穫のタイミングは全部自分で決めている。
ボジョレーでは一斉に始めていたが、ここサヴォワでは収穫のタイミングは区画ごとに待って行う。その期間の幅は、およそ2か月にも及ぶ。
瓶詰めしたばかりの2022年ヴィンテージを試飲させてもらっているとき、今後はジャー(アンフォラ)を少しずつ増やしていきたいと彼女は言った。
まさに!フランスが醸す液体は、ジャーにとても合っている。
品種の個性と向き合って、出来るだけピュアに表現したい彼女には、当然の選択のように思えた。
試飲が終わると、地元の人達で賑わうビストロへ食事に行こうということになった。
彼女のファンたちも一緒だ。
そこで、包み隠さず、正直に語ってくれたワインへの想いや自身の歴史。
潔く大胆に見えるが、細かい気を遣える繊細で優しい人である。
細い身体で子育てをしながらでは想像以上に大変だろうが、堅実に一生懸命、この地で改めて生産者としての道を進む決意をした。
話を聞いていたら、全くそんな苦労は感じさせないが、彼女を応援したい気持ちでいっぱいになった。
帰り、同じ想いで彼女を支えているであろう地元の名手たちが、もう一杯ご馳走させてくれとなかなか帰してくれなかった。
デザートまでご馳走になり、おなかがはちきれそうになった私たちを、彼女は申し訳なさそうにウィンクしながら解放してくれた。
私たちを見送り店に戻るその華奢な後ろ姿をみて、逞しさと、新たな挑戦への覚悟を感じた。(2023年4月)
美しい森や湖と言った自然が豊かな地方であり、スイスとイタリアの国境、アルプス山脈の麓に位置します。北を レマン湖 、東から南を アルプス山脈 、南東部をシャルトルーズ山地、東を ローヌ川 とギエール川に囲まれていて、西ヨーロッパ一標高の高い(4810m)モンブラン山地の一部が含まれます。
葡萄畑は、スイス国境のレマン湖畔から、ローヌ河沿い、イーゼル河沿い、アルプスに繋がる山岳地帯の中の標高200~500mのところに点在しています。3つのAOC地区(シニャンChignin、アプルモンApremont、ジョンジューJongieux)を含む全20のブドウ生産地区から成り立つ土壌は、石灰岩に泥灰土、それに氷河が運んだ沖積土が混ざっています。アルプス山脈の中心という比類なき地理的条件を反映し、山岳および大陸性の厳しい気候の影響は受けますが、湖や河川で和らげられ、夏と秋には好天に恵まれ葡萄が良く実ります。とはいえ総体的に厳しい気候なので、それに耐えうる地方特有の固有品種が選ばれています。山間のミクロクリマが織りなすワインは、総体的に酸がフレッシュで、みずみずしさの中にフィネスとしっかりとした旨味があるのが特徴。料理は、イタリアの影響下にあったため、パスタなども良く食卓に上がりますが、チーズ料理のフォンデュやタルティフレット、トム・ド・サヴォワなどがワインと相性が良く、とても愛されています。
ラングドック(オック語: Lengad'òc)は、フランス南部の地方名で、元々は13世紀にフランス王領に併合されたオック語地方を指す名称。西北からガール県、エロー県、オード県、ピレネー・オリエンタル県を跨いだ広範囲の産地であるために、土壌も多岐に渡ります。海沿いの地域は砂質、石灰質、粘土質で、山側の地域はシストと呼ばれる結晶片眼、泥灰岩、玉砂利などが広がっています。東に位置しているプロヴァンス地方と同様、その多くが典型的な地中海性気候ですが西部では海洋性気候の影響も見られます。夏は雨がほとんど降らずに乾燥しており、冬は穏やかな気候です。トラモンタンと呼ばれる乾いた冷風がブドウ畑を乾燥させ、病害から守ります。 主要品種は、白ブドウがグルナッシュ・ブラン、ブールブーラン、ピクプール、クレレット、ヴェルメンティーノ、マルサンヌ、ルーサンヌなど。また、主にフランス北部で栽培されているシャルドネや、スペインワインに多く使用されるマカベオ(マカブー)も栽培されています。黒ブドウはグルナッシュ、ムールヴェードル、シラー、カリニャン、サンソーなど。温かい気候を好むブドウ品種が多く、味わいは、まろやかでふっくらとした果実感と、やわらかい飲み心地が特徴です。