Producer introduction
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アルチュールは英雄アーサー王と同じ綴り。
エチケットにはアーサー王にかけて葡萄の房の上で剣を持ったアルチュールが風刺画として登場している。心根の優しいアルチュールには剣ではなくアカシアの方が「らしいわね」と母親のエレーヌは茶化していた。(※アーサー王とは「アーサー王物語」で知られ古くから伝説の英雄として語り継がれている人物。)
ドメーヌを訪れたとき、迎え入れてくれたのは父親のジャン・フランソワだった。
アルチュールの父親でブリュノ・シュレールの従兄弟。彼自身が偉大な生産者である。
息子アルチュールが譲り受けた畑を出来る限り隈なく丁寧に案内してくれた。
息子が手に入れた畑がどれだけ貴重なものか彼が一番理解している。
ドメーヌに戻ると、敷地内で楽しそうに話し込んでいた若者たちが居た。
その中の一人がアルチュールだった。
まだあどけない雰囲気をまとったその青年は恥ずかしそうに挨拶に応えてくれた。
そのあと、料理上手と評判のエレーヌの手料理を皆で頂いた。
あまりにも温かくて美味しいエレーヌの料理は感動的だった。
家庭的な雰囲気のなか席が隣だったアルチュールにいくつか質問をさせてもった。
途中、両親から、アレを取ってこいとか、アレ持ってきてとか、頼まれる度、話を中断し
文句も言わずに直ぐに席を立って言いつけに従うアルチュール。
なんて素直で優しい子だと感心した。質問にも、ひとつひとつ真剣に丁寧に答えてくれる。
とにかく純粋で真っすぐ。それがアルチュールという人。だと思った。
エレーヌが茶化した`アカシア`というのには理由があった。
アルチュールの趣味が、近所の森を散策しアカシアの木を集めることだったからだ。
木のアーティスト。と両親は楽しそうにそう言った。
集めたアカシアの木をつかって家族のためにベンチや家具を作る。
アルチュールが6歳のとき、交通事故に遭った話を母親のエレーヌがしてくれた。
いま元気に生きていることが不思議に思えるほど大きな事故だったという。
それが原因で左足の長さが6cmも違ってしまった。
エレーヌの話を聞いている間、当時の両親の気持ちが痛いほど伝わってきて、胸が苦しくなった。その後、大手術が成功した結果、今うまく歩けている。元気に畑仕事が出来ていることが奇跡のようだ。
子どもは大きくなっても、小さい頃の、一番可愛い頃の思い出を親はずっと忘れない。
あまりにも可愛いかったから、よく思い出す。だからいつまでも忘れない。
その頃に、あまりにも辛い思いをさせてしまったと、言わないけど両親の気持ちが伝わってきた。大切な息子は、ずっと大切だ。その愛情を素直に受けたアルチュールは、本当に真っすぐに、いま自分の道を着実に進んでいる。
アチュールがワイン造りに興味をもったのは中学生の時だった。
その頃から家の向かいにドメーヌを構えるピエール・フリックや、パトリック・メイエ、シュレールの畑を手伝っていた。
父親のジャン・フランソワも物心ついた時から父の仕事を手伝っていたという、実家は栽培農家だった。
自分が自然に畑の仕事を手伝った経緯と変わらず息子のアルチュールも畑仕事を苦だと思わずに取り組んでいる。
そのことにジャン・フランソワは嬉しい気持ちで見守っているようだ。
自分よりも良い畑を手に入れた息子に対して悔しそうな素振りをするが、内心嬉しいというのが顔に出てしまっている。
アルチュールが取り組む区画は以下の通りだ。
①Jean Baptiste Adamから譲り受けた0.65haのオーセロワ、ピノ・ブラン(樹齢 50-60歳)が植わるKiostermattという区画。
湿度が高く乾燥しない土地だから、ペティヤンやクレマンに適しているよう。2004年からビオディナミ。 アルチュールは2023年から所有。 隣りはブリュノシュレールの畑(ⅢKLトワカーエル) 。譲り受けたときシュレールと半分ずつ分けた。
②0.2haのピノ・グリ(樹齢25歳 )が植わる景色の素晴らしい区画。アルザスの冷涼な地域にして標高は400mある。2,3年後までにテラスをつくる予定。
③Pfersigberg/HoernleというGCの区画。 シャンデゾアゾー(シュレールピノ)の隣り。2023年から所有。真下にシュレールのアッシュリースリング。ゲヴェルツにしては暑いから辛口に造るのが難しい。今後グレッパージュ(根を残したまま)ピノ・ノワールなどに変える予定。ここだけ石灰質土壌で皆が欲しがっていた区画。
④ボーレンベルグ(地区名)。0.25haプルミエクリュ。アルザスの中で一番雨が少なく乾燥している。生態系保護区域。プレートがぶつかって溝になった部分で表土が深い土地。
これからがとっても楽しみなアルチュール。期待を込めて精一杯応援していきたい。(2023年4月)